【名もない感情】のレオン視点。
実はレオン←セリオスじゃなく
レオン→←セリオスだった、みたいな。
お互いまだちゃんと気持ちを自覚してないと。
でも惹かれあってるんだ。
++++++
いつも冷たい表情をしていたあいつ。
最初は見下されてるみたいで腹がたったけど、
最近は違うってわかってきたんだ。
あいつは・・・たまにだけど、本当に楽しそうに笑うことがある。
それに気づいてから、俺はもっとあいつを知りたいと思ったんだ。
この感情を何と呼ぼう
「でさー、ロマノフ先生ってばすっごい怒っちゃってさー」
「うわ、それはキツイなー」
「ロマノフせんせい、怒ったらすっごく怖いもんねっ」
昼休み、中庭でルキアとアロエ、ラスク、俺の4人で喋っていた。
最近、俺はいつも昼休みは中庭にいる。
それは、中庭から見える教室の窓際に、いつもあいつ・・・セリオスがいるから。
何をしてるのかは分からないけど、セリオスはだいたい教室にいる。
今日もいつもみたいに教室を見上げると、セリオスがカイルと話してるのが見えた。
「……へぇ」
そう言えば、あいつ一人でいることが多いけど、カイルとはよく話してるよな…
「あいつ、カイルと仲いいんだな…」
「レオン?何見てるの?」
1人呟いたところでルキアに声をかけられて、慌てて窓から視線を戻す。
「へ?あぁ、別に何でも…」
「ふぅん…?怪しいなぁ~」
ルキアはそう言って俺が見ていた窓に視線をやって、
「あっ、わかった!」と声をあげた。
「セリオスのこと見てたんでしょ!」
「うっ……」
図星。女って、こういう時鋭いよな。
「レオンってば最近ずっとセリオス見てるわよねー」
「そ、そんなに見てるか?」
確かに自分でも結構見ちまってるとは思うけど・・・
他人から見ても分かるくらいだったのか?
「そうよー。ねぇ、アロエもそう思うでしょ?」
「うん、よく見てると思うなぁ」
アロエにまで、そう思われてんのか・・・
てことは俺、よっぽど見てたんだな。
「・・・セリオスも、よくこっち見てるよね?」
「へ?」
予想外の言葉に、俺は驚いてラスクの方を見た。
「セリオスが、俺のこと見てる?」
「うん。だってさ、さっきもレオンのこと見てたし」
「え?ほんとか?」
「うん、じーっと見てたよ」
どうして、セリオスが俺のこと・・・?
「もしかして、セリオスってレオンのこと好きなのかもねー」
「・・・えぇぇぇぇっ!?」
俺の頭に浮かんだ疑問を一瞬にしてぶっ飛ばしたラスクの発言に、
俺は思わず大声をあげてしまった。
「うわっ、ちょっとレオン声大きすぎ!」
ルキアが耳を塞いで俺を睨む。
けど、しょうがねぇだろ!?
だってよ・・・セリオスが俺のこと好きだとか、ありえねぇだろ!?
「だいたい、な、何でそうなるんだ!?」
「えー?だって、そうじゃなきゃ何なのさ」
「何なのさって・・・大体、俺そんなにアイツと喋ったりしてねぇぞ?」
俺とセリオスは、元々性格が正反対ってのもあってあんまり喋ったことがない。
最初同じクラスになった時の印象も、正直あんま良くなかったし。
「それはあんまり関係ないでしょー」
「そうよそうよ!」
俺とラスクの間に割り込んできたルキアは、何でだか楽しそうだ。
「ルキア、お前まで何言って・・・」
「仮にセリオスが違うとしてもさ、レオンはセリオスのこと好きなんじゃないの??」
「は?」
・・・セリオスのことが・・・好き?
俺が・・・・?
「・・・・・は・・・はぁぁっ!?」
「あれ?レオン、顔が真っ赤だよ~」
「あははっ、照れてる照れてるー!」
アロエが首を傾げている横で、ルキアが爆笑してる。
「笑うんじゃねーっつーのっ!!」
「レオン、その顔で笑うなっていうのはちょっとキツイよ」
「ちょ、ラスク!お前が変なこと言ったせいだろっ!」
「僕のせいにしないでよねー」
そんな会話をしてたら、ふと視線を感じた。
何気なく窓のほうに顔を向けてみたら、セリオスと目が合った。
俺よりも少し白い肌に銀色の髪、翡翠色の瞳。
-セリオスって、ホント綺麗だよな-
とかそんなことを思いながら何となく手を振ってみたら、
セリオスは顔を逸らして、窓から離れてしまった。
「あれ・・・・?何だよ、あいつ」
俺が首を傾げると、ルキアが大袈裟にため息を吐いた。
「鈍いなぁ~もう。あれって、どう見たって照れてたじゃない」
「照れる?何で?」
ただ手を振っただけなのに。
それに、セリオスだったら照れるとかじゃなくて、ただ無視したってだけじゃないのか?
「何でって・・・それは、レオンがあんな顔して手を振ったからでしょ」
「あんな顔?」
「すっごく嬉しそうな顔してたわよ」
「え・・・」
嬉しそう?俺、そんな顔してたのか?
「まぁでも、レオンも分かりやすいけど・・・セリオスも案外分かりやすいんだね」
「ほんとだよねー何か以外かもっ」
ラスクとルキアが笑う声が聞こえたけど、
俺はそれには答えずに、セリオスが立っていた窓をぼーっと眺めていた。
俺・・・・セリオスのこと、どう思ってるんだ・・・?
大体、何で俺・・・こんなにセリオスのこと気にしてるんだ?
セリオスは・・・・俺のことを・・・どう、思ってるんだ・・・・?
そんなコトを考えると、むず痒いような気持ちになる。
これって・・・・何なんだ?
「わっかんねー・・・・」
どこかもやもやする気持ちを振り払うように頭を振って、俺は空を見上げた。
この日が、きっと始まりだったんだ。