もう1コUPしておく。
「カタオモイ」の続き的な。
シズちゃん&トムさんSide
臨→←静←トム
というね。トムさんの愛は大きいと思う。
++++++++++
「いぃぃざぁぁやぁぁぁ!!!!」
静雄の手元から臨也に向けて投げられた物体は、
臨也の横を掠めて壁に突き刺さった。
「うわー、危ない危ない」
そう言いながらも、余裕の表情で臨也は笑う。
「相変わらずバケモノだねぇシズちゃんは!」
「うるせぇ!!黙れ死ね!!!」
「アハハっ!ヒドイなぁシズちゃん!!」
次々と投げつけられる、一般人ではとても持ち上げられない物達。
しかし臨也はそれらを軽々と避け続ける。
そんな中で、臨也の携帯が震えた。
「あぁ・・」
ディスプレイを見て、臨也は少しだけ残念そうな表情をした。
そして
「っ!?」
静雄が『一方通行』の標識を引っこ抜く一瞬の隙に、
臨也は距離を詰めて静雄の耳元で囁いた。
「もっとシズちゃんといたかったんだけど、用が出来ちゃった。
だから、またねシズちゃん☆」
「このっ・・・!!!」
静雄が標識を振りぬいた時には、臨也の姿は無かった。
「・・・・・・」
手に持っていた標識を地面に放り投げて、静雄は臨也の消えた方を眺めた。
「おーい、静雄ー」
聞きなれた上司の声に振り向く。
「あーあー、また派手にやったなぁ」
「トムさん・・・」
「っていうか、お前らホント仲悪い・・・いや、いいのか?逆に」
「いいって・・・俺と臨也が、っすか・・?」
嫌そうな顔をする静雄に、トムは苦笑いを向ける。
「いやほら、喧嘩するほど仲がいい・・って言うだろ?」
「別に・・あんなノミ蟲と仲がいいなんてことないですよ。絶対に。
俺はアイツを殺したいほど嫌いで、それはアイツも同じですよ。
次に会ったら、ぶっ殺してやります」
そう言って、静雄はふいと視線を逸らせた。
その先は、臨也が去っていった方向。
「それに――――――――」
「ん?何だ?」
「あ、別に、何でもないっす」
浮かない表情。最近、静雄はこんな表情をよく見せる。
原因は、折原臨也だろうということは、解っていた。
さっきの言葉も、トムには本当は聞こえていた。
『それに――そうじゃないと、アイツを追う理由が、ない・・・』
臨也が去った方を見ながら、そう呟いたその声は、
いつもの静雄からは想像できないほどに、弱弱しかった。
そしてその瞳には、やりきれない切なさがはっきりと浮かんでいた。
(あーあ・・・こんな表情しちまうなんてな・・)
静雄は、自分自身が臨也に【憎しみ】ではなくて【愛情】を向けてしまえば、
臨也は静雄への興味を失ってしまうと思い込んでいるんだろう。
そんなことは無いと、トムは思っているのだが。
今の関係を壊すことを、静雄は恐れている。
(俺だったら、こんなカオさせねーんだけどなぁ)
トム自身、静雄のことを大切に想っていた。
しかし、静雄が想っているのは自分ではなくあの情報屋なのだ。
だから『俺にしとけ』とは絶対に言わないことにしている。
そう言えば、自分を慕っているこの可愛い部下はきっと戸惑うだろうから。
「・・そうか。んじゃ、そろそろ行くぞ?」
「っす・・・」
(静雄も素直じゃないが、アッチも相当歪んでやがるからなぁ・・
俺に出来るのは、見守るくらいかねぇ・・・)
不器用で歪んだ恋。
「まぁでも・・・・・」
「??トムさん、何か言いました???」
「いや、何でもねーべ?ほら行くぞ」
「あ、はい」
(まぁ、俺も歪んでるのかもしれねーけどさ)
そんな歪な恋をしている部下の背中を叩きながら、トムは空を見上げた。
―――幸せに出来ないようなら、お前に静雄は渡さないぜ?・・折原臨也―――
「気に入らないなぁ・・・あの瞳・・。シズちゃんを愛してるのは、俺だけでいいんだよ。
シズちゃんもシズちゃんだよねぇ。あいつの言うことは素直に聞いちゃってさ。
うん・・・苛々するなぁ・・・・さーて・・・」
どうしようか?―――ねぇ、シズちゃん?