バカップル!!!
何か毎回久々の再会ネタになるが、自己満足だからよしとする^^
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04. 1ミリの隙間も開けたくなくて
『ユーリ、僕たち、ずっと一緒だよね』
幼い頃・・・僕がまだ、下町にいたころ。
『そんなの、当たり前だろ』
当たり前のように、傍にいた。
『本当に?』
彼の―――ユーリの隣にいるのは、ずっと僕だと思っていた。
『本当だって』
ずっと、信じていた。
けれど、今は――――――
「・・・・隊長!どうなさったのですか?」
ソディアの声で、フレンは自分がボーっとしてしまっていたことに気付いた。
「あ、あぁ・・すまないソディア、何でもない」
そう言いながらも、フレンの視線はまた窓の外を向く。
「・・・・ユーリ・ローウェルの事をお考えですか?」
「・・そう、見えるか?」
「隊長がそのようなお顔をなさる時は、たいていユーリ・ローウェルが関係していますから」
ソディアがそう言いながら、険しい顔をした。
フレン自身も、ユーリのことになると普通ではいられないのは自覚している。
「すまない、騎士の職務中に私情を挟んではいけないと分かってはいるんだが」
「・・・ユーリ・ローウェルがまた何かしたのですか?」
「いや、違う。ただ・・変わってしまったんだな、と思っただけだ」
今、『凛々の明星』として動いているユーリ。
ギルドの仕事は忙しいらしく、なかなか連絡も取れない。
フレンも、騎士団の職務の為に忙しい日々を送っていた。
慌ただしく、毎日は過ぎていく。
ユーリに会えないまま。
「どんどん、距離が開いていく気がするんだ・・・」
「・・・無礼を承知で申し上げますが・・
私は、もうユーリ・ローウェルには会って欲しくない・・・と、思っています」
「そうだろうな」
「しかし・・・認めたくありませんが、隊長にとって・・・あの男は大切な存在だということも、分かっています」
ソディアは、悔しそうな表情を浮かべたが、すぐに忠実な部下の顔へ戻る。
「ソディア・・・」
「・・・私は、これで失礼いたします。報告書は、こちらに置いておきます」
「あぁ」
ソディアは報告書を机の上に置くと、扉を開けた。
振り返ると、フレンはまた窓の外を眺めている。
―――ユーリ・ローウェル・・・お前は、隊長の心をどれほど奪っているんだ―――
腹立たしい、けれど。
それでも、この金の髪の隊長を癒すのは、他の誰でもない彼なのだと。
ソディアは痛いほどよく知っていた。
「・・・・隊長」
「ん?」
「 」
振り向かないまま、小さく呟かれた言葉。
その言葉にフレンが顔を上げたのと、扉が閉まるのはほぼ同時だった。
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「ユーリ・・・・!!」
「うわっ・・・フレン!?」
扉を開けるなり抱きついてきた幼馴染みに、ユーリは目を見開いた。
「ユーリ、会いたかったよ」
「ちょ、フレ・・・んんっ」
押し返す間もなく激しく口づけられる。
膝から力が抜けると同時に、ベッドに押し倒された。
「っん・・・・ちょっと、待てよ・・・フレン!」
「・・・何だい、ユーリ・・・」
「お前、がっつきすぎ・・・どうしたんだよ」
「・・・・ユーリ・・・僕と君の距離は・・・今、どれくらいだ?」
フレンの言葉に、ユーリは怪訝な顔をする。
「何言ってんだ?こんなの、ほとんど距離ないじゃ・・・っ」
呆れたように言うユーリの身体を、フレンはぎゅうと抱きしめた。
「違うんだ・・!昔は、君の隣は僕のものだと思ってた。
距離なんか、感じなかった。けど今は、君を遠くに感じる・・・・!
ギルドとして世界中を飛び回る君を見るのは嬉しい。
けど・・・・僕が知らないユーリが、どんどん増えていくような気がして・・・」
「・・・・・・・」
「ねぇ、ユーリ・・・僕たちの距離は、どれくらいなんだ・・・?」
絞り出すような声に、ユーリはわざと大きくため息をつく。
「はぁ・・・ったく、お前はまたそんなメンドーなこと考えてたのか」
「面倒って・・・・・・っ?」
ユーリの言葉に反論しようとした時、今度はユーリがフレンを抱きしめた。
「俺とお前の距離?そんなもん、今も昔も変わらないだろ?」
「ユーリ・・・」
「こんだけ近くにいて・・・距離があるワケないだろーが・・・・・」
お互いの体温、心臓の音まで伝わってくる距離。
「ユーリ、もしかして・・・ドキドキしてる?」
「っ・・・お前が恥ずかしいこと言わせるからだろーが」
「ねぇ、ユーリ・・・もっとユーリに近づきたい」
「え・・・・」
「ユーリ・・・直接、触れたい」
「・・ったく・・・・仕方ねぇな・・・・・」
熱い吐息と共に耳元で囁かれた言葉に、ユーリは目を閉じた―――――
「・・・・フレン・・・・・・・水・・」
「分かった、すぐ持ってくる・・・・大丈夫か?」
ベッドの上でぐったりしていたユーリは、少しだけ身体を起こしてフレンを睨んだ。
「お前・・・張り切り過ぎだろ・・こっちの身にもなってくれ」
「すまなかった・・・君を前にするとどうしても、抑えがきかなくて・・」
フレンは本当に申し訳なさそうに謝った。
あの後、結局朝までずっと抱き合っていたのだ。
結果、ユーリはベッドの上から動くことが出来なくなっていた。
その上散々声を出したせいで、ユーリの声は枯れきってしまった。
「まぁ・・いいんだけどな・・・・」
それほどまでに求めてくれたという事実は、ユーリにとっても嬉しいものだった。
性格上、そのことを言葉に出すことはないけれど。
「ねぇ、ユーリ」
「何だよ?」
「君の隣は・・・僕のものだって、思っていていいのかな?」
「・・・・今更、だろ」
「ありがとう、ユーリ」
照れてしまったのか、背中を向けてしまったユーリを抱きしめる。
しばらく大人しくしていたユーリだが、ふとあることを思い出した。
「あ・・・そう言えば」
「うん?」
「フレン、お前どうして俺が帝都に戻ったこと知ってたんだ・・・?」
「え?」
ユーリは、ギルドの仕事が一段落した為に帝都に戻ることにしたのだが、
そのことはまだ、ギルド内の人間以外には誰にも知らせていなかった。
にも関わらず、フレンはユーリが帝都に戻ったその日に訪れたのだ。
ユーリにしてみれば、それは不思議で仕方のないことだった。
「俺、本当は明日にでもお前んとこに顔見せようと思ってたんだけど」
「あぁ・・・・それは・・・・・」
フレンは忠実な部下の言葉を思い出した。
部屋から出て行く直前に、彼女が呟いた言葉。
――――隊長・・・・ユーリ・ローウェルは帝都に戻ってきています――――
今、こうしてユーリを抱きしめていられるのは、その彼女のおかげだ。
今頃彼女自身は、自分たちがこうして会っていることに対しての不満を募らせているのだろうが。
そう思うと、多少は申し訳なく思うけれど。
「明日、ソディアには謝らないとな・・・」
「ん?何か言ったか?」
「いや・・・それよりも、水だったね。持ってくるよ」
「あぁ・・・って、俺の質問に答えてねぇじゃん」
「悪いけど、秘密ってことにしておいてくれ」
「何だそれ」
ユーリが首を傾げる様子に、フレンは小さく笑って水を取りに部屋を出た。